お客様の声:KUBOTA 遠心機
株式会社 M 様
[3740、MF-2236]
お仕事の内容
野菜、花種子の育種、研究、試験、生産および販売
現在販売されている野菜品種の多くは、優秀な親同士を交配させた1代雑種(F1)です。そのため商品である種子が、問題なく両親の1代雑種である事を販売前に検査、確認する必要があります。
この検査の前処理として、M様ではビーズを使ったサンプルの破砕と、遠心分離による試料の精製を行っていらっしゃいます。
またM様では一日最大1,000サンプルを検査されており、
- マイクロチューブをお使いになりたい
- 検査では遠心後の上澄みを使うので、高速スイングが望ましい
- 一回に処理できる本数は多ければ多いほどよい
今回はどのような使い方をされているのか、お話を伺いました。
お仕事の内容を、簡単にご説明いただけますでしょうか?
当社は野菜の品種開発、種子生産および販売をしています。野菜品種の多くは一代雑種品種です。
たとえば、ダイコンの場合、見た目が良い形状の品種と、見た目は悪いが病気に強い品種を掛け合わせることにより、見た目が良く病気にも強い優秀な品種を作り出すことが出来ます。
その一代雑種種子を生産する場合、交配ミスや交雑、混入などにより本来の品種以外の違った形状の野菜が出来てしまうことがあります。そこで種子を出荷前に検査、確認するのが品質管理室の仕事の一部となっております。
このためには実際に作物を栽培し表現型を見て検定する方法や、DNA・タンパク質で検定する化学方法があります。作物を栽培する検定も行いますが、栽培環境により評価に影響を受けることや、実際に栽培するため、評価に時間がかかる等の欠点があります。そこで、迅速かつ正確に検定を行うため、化学検定法を実施しています。その時に遠心機を使用します。
実際のプロトコルはどのようにしているのでしょうか?
タンパク質検定法の一つである(Starch gel electrophoresis)方法では、
- 種子をまいて4日位で発芽してきます。このときに片方の葉を取り、マイクロチューブにビーズ・抽出液とともに入れる。
- マイクロチューブをビーズショッカーにかけ、サンプルを破砕する。
- 4℃、12,000rpm、3分で遠心分離にかける(1回の処理本数は、スイングロータで2mL×24本)
- 上澄み部分にろ紙をいれ、ろ紙に上澄みを吸わせる
- ろ紙をゲルに挿入し電気泳動にかける
- 電気泳動後のゲルを染色し、タンパク質(Isozyme)のバンドをチェックするというものです。
その他 Isoelectric focussing(IEF) 検定法、DNA検定法なども実施しています。
葉を取って、ビーズと抽出液を加えたところ
ビーズショッカーにかけたあと
遠心分離をかけたあと
ろ紙に上澄みを吸わせているところ
スイングロータをお使いになる理由は、何でしょうか?通常タンパク質の抽出・精製では高速回転が求められるので、アングルロータを使われるお客様が多いのですが。
遠心分離をしたあとの上澄み部が必要なのですが、ビーズを入れたまま遠心をするので、アングルロータを使うとチューブを取り出すときにビーズが動いてしまい、沈殿物が舞い上がってしまいます。
その点スイングであれば沈殿物がきれいに落ちるので、アングルに比べ舞い上がりを心配する必要がありません(DNA抽出のような、遠心後の上澄みを移し変える操作の場合、作業しやすいです)。
また回転数も重要です。回転数が高ければ高いほど、上澄みはきれいに取れますし、遠心時間も短くてすみます。
季節的な要因もありますが、最大で1,000サンプル扱うこともあるので、全体の処理をできるだけ短時間に行う必要もあるのです。
※【スイングロータ使用時】
沈殿物が底面に集まる事により、サンプルの舞い上がりが
少なくなります。
またビーズがサンプルに埋もれる事により、ロータよりチ
ューブを取り出す際の、ビーズの振動による沈殿物の舞い
上がりも抑えられます。
※【アングルロータ使用時】
ロータからサンプルを取り出す際、ビーズの振動によって
沈殿物が舞い上がります。
また壁面に着いたサンプルが、時間の経過とともに舞い上
がります。
遠心機をお使いいただいて、何かお感じになったこと、ご不満などはありますでしょうか?
運転時の音も静かなので、特に気にはなっていません。 ただ最初は、ロータの中のバケットの色が蛍光色で、少し目にきついなあと思いました。いまはだいぶ慣れたので問題ないのですが。
最後に
本日はご多用の中、お時間をいただきありがとうございます。
野菜の品種開発、種子栽培と品質管理のご形態についてもはじめて知ることができ、とても勉強になりました。
今後とも、なにとぞよろしくお願いいたします。