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お客様の声:KUBOTA 遠心機

東京大学 石井先生

[7780、AG-5006A、AG-224] 現行モデル 7000

ご研究内容

精密合成高分子と薬物、DNAを結合させ、さらに高分子微粒子の表面に目的細胞に対する認識部位を保持させることで、がん標的治療、遺伝子治療のためのナノ構造デバイスを創製されています。

研究室名
東京大学工学系研究科
マテリアル工学専攻/バイオエンジニアリング専攻
東京大学 医学系研究科付属
疾患生命工学センター臨床医工学部門
片岡研究室

所在地
東京都文京区

お客様HP
https://www.u-tokyo.ac.jp/

カーボンナノチューブや金属ナノ粒子の基礎研究が進み、いろいろな特性が明らかになる中で、ナノマテリアルは太陽電池・医療など幅広い分野での応用が期待されています。 今回はそのような応用研究のひとつとして、高分子ナノ粒子を応用したDDS(ドラッグ・デリバリー・システム)、遺伝子ベクターをご研究されている、東京大学 片岡研究室の石井先生にお話しをお聞きしました。
片岡研究室では弊社Model 7780をご導入いただいており、遠心限外ろ過でナノ粒子の精製・濃縮をされるなど、毎日さまざまな用途でお使いいただいているとのことです。
今回はご研究内容や、実験の中でのご使用方法などをお聞きしました。

本日はご多用の中、お時間をいただきましてありがとうございます。まずはご研究内容をお教えいただけますでしょうか。

片岡研究室の中では、さまざまなブロック共重合体から高分子ナノ粒子を作っています。

このナノ粒子の応用は主に二つで、第一に抗がん剤をポリマーでくるみ、DDS(ドラッグ・デリバリー・システム)として活用するパターン。もう一つは、治療用の遺伝子や核酸をデリバリーするキャリアとしての応用を考えています。

片岡先生の研究室は、DDSのご研究で国内トップを走られているかと思いますが、何か新しいタイプのDDS研究などに着手されているのでしょうか。

従来のタイプでは目的とする腫瘍組織にナノ粒子が届き、薬剤が徐々に放出されるというかたちになっていました。

現在開発が進んでいる新しいタイプでは、がん細胞内の活動が活発であるが故にpH値が正常な組織に比べて若干低いという性質や、ナノ粒子が細胞内に取り込まれる過程で酸性の小胞体にくるまれるといった性質を利用し、pH値が下がると、薬剤とポリマーの結合が切れ、がん組織周辺やがん細胞内部でナノ粒子から効率的に抗がん剤を放出する仕組みになっています。
また生体適合性の高いポリマーを使用しており、主にアミノ酸の誘導体でできていますから、体の中で自然に分解されてなくなる、という仕組みになっています。

なるほど。DDSもどんどん高度になっているのですね。
ところで、ナノ粒子のもう一つのアプリケーションである、遺伝子ベクターについてですが、遺伝子治療でよく出てくる、ウィルスベクターとはどう違うのでしょうか。

遺伝子治療では現在、ウィルスベクターを使った手法が一般的で、アメリカでも無毒化したウィルスを使った手法で臨床治験が試みられています。
しかしこの方法は、まずウィルスの完全な不活化が非常に難しく、またたとえば過剰な免疫反応を誘導してアナフィラキシーショックを引き起こすことが懸念されており、安全性という意味で改良すべき点が多いです。そこで私たちは、より安全な人工合成化合物で代替してしまおうではないかということで、現在取り組んでいます。

素人的な質問で大変恐縮なのですが、人工的に作ったもので、ウィルスを完全に代替できるものなのでしょうか。
たとえば感染力の強いウィルスというのは、遺伝子キャリアとして非常に優れているということがあると思うのですが。

確かにそのとおりで、まだまだ合成系の遺伝子キャリアは、ウィルス系の遺伝子キャリアに比べると2桁か3桁、効率が落ちます。in vitroでは効率的に見劣りしないレベルまで達しているのですが、実際の生体内に入れると、やはりまだまだ難しい。

実際、自然界のウィルスに学ぶ点は多く、たとえばなぜウィルスの粒子の中で、DNAがきれいに折りたたまれているかとか、なぜ、あるアデノウィルスはきれいな正20面体になっているのかとか、まだまだ分からないことが多く、ウィルスの仕組みから学ぶことも本当に多いのです。

生命の不思議さを感じさせるお話しですね。お話しをお聞きしているだけで、生命の奥深さ、科学の挑戦という感じがします(笑)。
ところで、弊社の遠心機については、ご研究の中でどのようにお使いになっていらっしゃるのでしょうか。

当研究室では多くの研究者がいるのですが、毎日いろいろな人が、様々な用途に代わる代わる使っています。たとえば使い方のひとつとしては、ポリマーと薬剤を混ぜると、薬剤をポリマーでくるんだナノ粒子ができてくる。これを遠心限外ろ過で精製・濃縮しています。

このようなナノ粒子の精製というと、通常は透析やゲル濾過でやるのが一般的なのですが、透析だと時間がかかるし、ゲル濾過だと手間がかかってしまう。一方で遠心限外ろ過は一度に何サンプルも同時に処理できるので、遠心分離の方がはるかに効率的です。

そのほかの使い方としては、たとえば薬剤を含んだナノ粒子をマウスに投与し、狙っている組織にどれだけ薬剤が届いているかを調べることもあります。このときはマウスの組織を取り出し、溶媒に懸濁させて遠心し、上澄みに抽出します。この上澄みの中に溶け込んでいる薬剤の量を定量しています。


マウスの組織を抽出し、溶媒で溶かして遠心したところ。


遠心前のチューブ(右側)と、遠心後のチューブ(左側)

先生のところでは、2mLマイクロチューブを22,000rpm、6時間という、高速・長時間運転をされているとも聞きましたが、これはどのような実験をされているのでしょうか。

これは遺伝子キャリアに関する実験で、pDNAとポリマーの会合に関する知見を得ています。遠心分離を22,000rpm、6時間すると、pDNAとポリマーが会合して生じるナノ粒子はすべて沈降し、pDNAに会合しきれなかったものだけが上澄みに残ります。この上澄みを調べ、どのくらいのポリマーがpDNAに会合しているかを定量化しているのです。

ナノ粒子は小さくて軽く、一般的には回転数や遠心力が低いと、落ちないこともあると聞いています。22,000rpm、6時間できちんと落ちるというのは、どのようにして調べられたのでしょうか。

研究室に分析用超遠心機があるので、それを使って条件だしをしました。この回転数、時間であれば、結合した粒子はきちんと落ち、それ以外が上澄みに残る、ということを調べたわけです。ただ毎回超遠心機を使うと大変ですから、日々の実験は御社の7780で行っているというわけです。

マイクロチューブ用のロータだけなく、500mLボトルを遠心する大容量ロータもお使いになっていらっしゃいますが、こちらはどのように使われているのでしょうか。

ポリマーを重合させ、遠心して回収し、粉として精製することがあり、その時に使っています。回転数はさほど高くなく、4,000~6,000rpm程度だったと思います。

ご研究内容、ご使用方法などいろいろ丁寧に教えていただきましたが、何かご不満な点はありますでしょうか。

特に不満な点はありませんね。分析器に比べれば、使い方も直感的に分かりますし、ロータをセットすれば、遠心機がロータを自動的に判別し、最高回転数以上は設定できないようにもなっていますし。

・・・そうそう、いろいろな人が使いますし、当研究室は海外からの研究者、学生も多いので、英語のクイックリファレンスのようなものがあれば助かりますね。

最後に
英語のクイックリファレンスについては、たしかに研究室内に留学生の方も多くいらっしゃいますので、必要性がおありなのはよく分かりました。弊社内に持ち帰り、検討させていただきます。
今回はDDS、遺伝子ベクターについて、非常に丁寧に教えていただきたいへん勉強になりました。その中で、弊社商品を多くお使い頂いているとのことで、とても嬉しく思いました。
これからも、メーカーとしてよりよい商品を市場に送り出せるよう、さらに努力したいと思います。今後ともなにとぞよろしくお願いいたします。