お客様の声:KUBOTA 遠心機
大阪大学 倭先生
[3740、AF-2724、AF-5004C]
ご研究内容
糖尿病の治療のため、ES細胞や幹細胞を分化誘導し、膵臓のベータ細胞を再生させる治療法の開発に取り組まれています。
研究室名
大阪大学大学院医学系研究科
病態制御医学専攻 分子治療学講座
幹細胞制御学 宮崎研究室
所在地
大阪府吹田市
お客様HP
http://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/nutri/www/
ES細胞やiPS細胞の研究が進むにつれ、人間の組織や臓器を人工的に作り出し、病気や怪我の治療に役立てる再生医療に注目が集まっています。
今回は大阪大学医学部の倭先生にご協力いただき、先生のご専門である膵臓のベータ細胞再生はどこまで進まれているのか。再生医療の研究の現場ではどのようなご苦労がおありなのか。ご研究の中で、弊社の遠心機はどのように使われているのか、お話を伺いました。
本日はご多用の中、お時間をいただきましてありがとうございます。まずはご研究内容をお教えいただけますでしょうか。
私たちの研究室では糖尿病の治療のために、ES細胞や幹細胞に遺伝子を導入し、膵臓のベータ細胞を分化誘導させる方法を開発しています。
ES細胞などを使って臓器の細胞再生をされているお客様のお話を聞くのは初めてなのですが、膵臓のベータ細胞というのは、ほかの組織に比べて再生させるのは難しいのでしょうか。
体の他の組織、たとえば心筋などは比較的簡単に分化誘導できるように思います。いっぽうで肝臓や膵臓の細胞というのは高度に分化した細胞であり、ES細胞を誘導するための因子を、まだ特定できていない段階です。
現在はいろいろ工夫しながら細胞を作り、その細胞でどの遺伝子やタンパクが発現しているのか、細胞のキャラクタライゼーションを行っている段階です。
「細胞のキャラクタライゼーション」ですか・・・。もう少し詳しく教えていただけないでしょうか。
たとえばES細胞や幹細胞を分化誘導し、インスリンを作る細胞を作ったとする。しかし膵臓のベータ細胞としては、グルコースに反応してインスリンを出してくれないと意味がない。研究の中で分かってきたのは、膵臓の幹細胞が分化し、いくつかの段階を経て最終的にベータ細胞になっていくのではないか、ということです。ですから私たちの研究においても、分化誘導してできた細胞についてどの遺伝子とタンパクが発現しているか調べ、細胞をキャラクタライゼーションする必要があるのです。
ふだん何気なしに膵臓は働いてくれているわけですが、その膵臓の細胞がそんな複雑なプロセスで作られているとは、初めて知りました。そう考えると、生命というのは本当に不思議なものですね。
ところでES細胞は扱いが非常に難しいと聞いているのですが、どういったところが難しいのでしょうか。
ひとつの例ですが、ある大学のES細胞と、別の大学のES細胞では、同じ条件で分化誘導してもまったく異なる結果になることがあります。同じところのES細胞でも、あるときはうまくいって、ほかのときはうまくいかないことがある。実際にやっていて感じるのは、細胞が常にゆらいでいるような感覚です。そういったこともしっかりとふまえて研究しなければならない難しさはあります。
ご研究の中で、弊社の遠心機はどのようにお使いいただいているのでしょうか。
たとえば幹細胞を培養し、細胞を回収するとき。幹細胞やES細胞に遺伝子を導入して培養し、その細胞を回収したいとき。もしくは細胞のRNAを試薬を使って抽出したいときなどに使っています。この遠心機であれば、細胞回収用のコニカルチューブも、核酸抽出用のマイクロチューブも、ロータを交換すればどちらもできるので重宝しています。
※弊社Model 3740本体が使われているところ。
奥の台に、コニカルチューブ用のアングルロータAF-
5004Cと、マイクロチューブ用アングルロータAF-2724
が置かれています。
※回収された細胞の形をチェックされているところ。
細胞の培養というと、もう少し大容量でやられるケースを想定していたのですが、現在は基礎研究の段階なので、50mL、15mLコニカルくらいのサイズでお使いなのでしょうか。
現在は15mLコニカルがほとんどです。少しサイズが大きくなったり、プラスミドを回収したりするときに、50mLコニカルを使う程度です。この遠心機はサイズも小さいので助かりますし、音が静かなのが何よりいいと思います。
お褒めいただきましてありがとうございます(笑)。
ところでこちらの卓上空冷タイプは、マイクロのスイングロータをお使いいただいているようですが、何か特別な理由があるのでしょうか。
※弊社Model 1130とRM-79をお使い頂いているところ。
スイングの方が、分離面がきれいに出るためです。たとえばフェノールクロロフォルム抽出をすると、境界面に不要物が析出するのですが、ピペットで上清をとるときに、分離面がきれいに出ていたほうがとりやすいのです。これがアングルだと、どうしても境界面が斜めになったりしてとりづらい。
そのほかマウスの血清をとったりするときも、やはり分離面がきれいに出たほうがやりやすいので、このスイングを使います。マウスのときは検体数も多く、24本全部使って何回もまわすこともあります。
※トランスジェニックマウス、ノックアウトマウスを使って
インスリンを作ることのできる細胞、できない細胞の差に
ついても研究されています。
RT-PCR前処理のスピンダウンで、弊社プレートスピンも
お使い頂いています。
最後に
本日はご多用の中、お時間をいただきましてありがとうございます。
膵臓のベータ細胞が非常に複雑なプロセスを経て作られていること、ES細胞を分化誘導されるときの難しさなど、初めて聞くことばかりでたいへん勉強になりました。
これからもメーカとして、ご期待に応えられる商品を世に送り出すべく、さらに努力したいと思います。今後ともなにとぞよろしくお願いいたします。