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お客様の声 クリスト 凍結乾燥機

東京大学 佐藤様 [ クリスト凍結乾燥機ALPHA 2-4 LDplus ]

東京大学 佐藤様 [ クリスト凍結乾燥機ALPHA 2-4 LDplus ]

ご研究内容

Dof1転写因子の導入により窒素同化能力を高めた形質転換植物体のメタボロミクス研究をされています。

大学・学科名

東京大学
大学院農学生命科学研究科
応用生命化学専攻
植物栄養・肥料学研究室

所在地

東京都文京区

大学HP

http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/syokuei/

 

お客様と凍結乾燥機の商談のとき、「凍結させた試料を途中で融解させることなく乾燥させたい」とのお声を聞くことがあります。
弊社取り扱いの凍結乾燥機は、コンパクトなサイズにもかかわらずチャンバ内で試料の予備凍結から乾燥までを一貫して行うことができ、融解しやすい試料、また凍結乾燥中に融解してしまっては困る試料を取り扱われているお客様には、自信を持ってお勧めしております。
今回お話を伺った東京大学佐藤様は、シロイヌナズナの代謝をご研究されています。代謝物質の含有量の正確な測定のために、はじめにメタノールを使って試料中の代謝を止めて代謝物質を抽出し、次に代謝物質の分解や変動を防ぐために凍結乾燥をしています。
メタノールを含む混合溶液は融点が低く非常に融解しやすいのですが、弊社取り扱いのクリスト凍結乾燥機をお使いいただくことで、凍らせた試料を融解させずに凍結乾燥できるとのことで、詳しくお話を聞かせていただきました。

本日はご多用の中、お時間をいただき誠にありがとうございます。まずは佐藤様のご研究内容を教えていただけますか。

私はシロイヌナズナにDof1という転写因子を導入した形質転換体を用いて、窒素同化能力の強化により光合成を促進する代謝制御のメカニズムを解明する研究を行っています。

窒素というと、一般的に植物の発育によい影響があるといわれていたと記憶していますが、科学的にはどういうプロセスで効いてくるのでしょうか。

窒素は植物が生命活動を維持するために不可欠なアミノ酸やタンパク質、DNAやRNAといった核酸、そして植物の光合成をおこなうクロロフィルなどに含まれる必須主要元素の一つです。
窒素は大気中に最も多く含まれる成分ですが、多くの植物はそれを直接利用することはできません。そのため、一般には根から硝酸イオンとして吸収し植物体の中でアンモニウムイオンに還元します。このアンモニウムイオンはグルタミン酸に取り込まれグルタミンになります。このグルタミンは光合成によって固定した炭素からつくられる2-オキソグルタル酸と反応して2分子のグルタミン酸を生成し、さらにアンモニウムイオンを同化する、もしくは他のアミノ酸の生合成のために使われます。

根付いたシャクナゲの苗

このように窒素は植物で行われる多くの反応の基礎になっています。さらに、植物は同化する窒素量の増加に応じて光合成能力も促進することが、本研究グループを主宰している柳澤修一准教授により確認されています。

なるほど。だからDof1転写因子を導入して窒素同化能力を高めた植物の研究が重要になるわけですね。

はい。Dof1転写因子の働きで土壌中の窒素をより多く同化することにより光合成能力が促進される。すなわち、大気中の二酸化炭素の吸収量を高めることにより、近年著しく増加している二酸化炭素による地球温暖化の問題や、農作物の収量向上による食糧問題、そしてバイオ燃料の生産性向上によるエネルギー問題などといった、グローバルな諸問題を解決することにも大いに役に立つのではないかと考えています。

お話しをうかがって、植物にとって窒素がいかに必要なものであるか、また窒素同化と光合成の代謝研究が私たちの生活に大きな関わりを持つことがわかってきました。
つまり、弊社の凍結乾燥機はその代謝を調べる過程で使われているのですね。

そうです。メタボローム分析では、Dof1を導入した植物体でどのような代謝物質の含有量に増減があるかを調べています。たとえばスクロースやグルコースといった糖類、グルタミンやグルタミン酸などのアミノ酸、クエン酸や2-オキソグルタル酸などの有機酸、及びこれらの代謝反応を制御するATPや補酵素などの測定を通して、分子レベルでDof1の制御メカニズムを明らかにしようとしています。この代謝物質を植物サンプルから抽出する過程で凍結乾燥機が必要になります。
具体的には次の手順です。

  1. 植物サンプルを液体窒素で凍結しホモジナイズする。
  2. メタノール、及び超純水を加え代謝物質を抽出する。
  3. 限外濾過によりタンパク質などを取り除き、代謝物質を精製する。
  4. 凍結乾燥機でメタノールと水を昇華させ代謝物質の乾燥物を得る。

ここで、私たちは代謝物質を変化させずにかつ安定な状態で保存するために3つの方法を使っています。1つは液体窒素でサンプルを瞬時に凍結すること、2つめはメタノールを添加することです。メタノールは、細胞の膜成分を溶解するとともに、代謝物質を変化させる酵素たんぱく質を失活させる作用を持っています。最後に、メタノールと水を除いて乾燥物の状態にし-80度のフリーザー内に保存します。

今のお話からすると、凍結乾燥ではなく遠心濃縮で、メタノールと水を蒸発させてもよいと思うのですが。

メタノールと水を単に蒸発させることだけが目的であれば、遠心濃縮で十分可能です。しかし、分析機器に導入するまでの過程において、代謝物質の変動や分解をできる限り抑えることが最も重要です。その目的には、常温で長時間の遠心濃縮はあまりよい手段とはいえません。代謝物質抽出液を凍結した状態を保ったままでメタノールと水を昇華させ、代謝物質の乾燥サンプルを得ることができるのが望ましいと考えていました。その手段が凍結乾燥です。

なるほど、完全に代謝をとめた状態が必要になってくるので、凍結乾燥機をご使用になっているというわけですね。

そのとおりです。凍結乾燥は、凍結したサンプルを溶解させることなく乾燥させることができるので、代謝物を分解させない安心感があり、正確なデータを得ることにもつながります。

少しでも信頼性の高い測定データを得たい、ですから凍結乾燥機を使用しているのです。

メタノールと水の抽出溶液であれば、とても溶けやすいと思います。それを溶かさずに乾燥させるために、クリスト凍結乾燥機のプロセスAがまさにうってつけなわけですね。

はい。純粋な水の凝固点は0度ですが、代謝物質の抽出溶液は約50%(v/v)のメタノール溶液の状態なので凝固点は約-40℃にもなります。しかし、特にこのプロセスAシステムでは、凍結乾燥中にサンプルを融解させることなく乾燥させることができます。ただ、はじめにサンプルをセットするときに、サンプルをディープフリーザーで凍結しておくことは必要です。装置に付属している真空ポンプが非常に強力なため、この手順を無視して装置を運転した場合、チャンバ内でサンプル溶液が凍結する前に突沸してしまいます。

試料をALPHA2-4にセットする直前
試料をALPHA2-4にセットする直前

お話しをうかがって、弊社の凍結乾燥機を有効に活用していただいていると知り、とてもうれしく思いますが、何かご不満な点はございますか。

はじめに期待した以上の性能で満足しています。強いていえば、試料をのせるチャンバの底がもう少し冷却できるとよいと思いました。
チャンバの周壁には冷却コイルがあり十分冷えるのですが、チャンバの底には冷却コイルがないので、試料をいれても底と周壁では温度に差が出てしまいます。先にお話した突沸がおきることの原因にもなります。そこで、私たちでは、アルミの熱伝導率がよいことを利用し、冷却コイルにアルミ板を接触させ、その上に試料をいれたチューブをのせています。標準品でこのようなものがあればよいと思います。

プロセスAで乾燥中
プロセスAで乾燥中

(最後に)アルミ板を接触させることで試料の底を冷やせるのであれば、アルミブロックをつくり、そのブロックに試料をいれることで、アルミブロック、試料ともに冷やすことができる見込みがあります。今後の商品開発に役立たせていただきます。貴重なご意見をありがとうございます。
本日はご多用の中、お時間をいただきまして誠にありがとうございました。
ご研究内容を丁寧にご説明いただき、植物で行われる光合成から代謝までの流れを詳しく知ることができました。
その中で、弊社凍結乾燥機が佐藤様のご研究に役立っていると聞き、大変うれしく思います。
今後とも何らかの形でお役に立ちたいと考えております。
本日は誠にありがとうございました。